第3話「少しだけ前進」~「わからん!」が、「普通にできた」になるまで~


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1. 再び熊本へ

1ヶ月ぶりの熊本訪問。

前回、颯太くんは挑戦問題に挑戦したものの、「わからん!」と鉛筆を投げた。

私はそのとき、彼の気持ちが完全に切れる前に、「じゃあまた日を置いて解説しよう」と伝えた。

(さて、今日はどうなるか……。)

電車に揺られながら、私は前回の挑戦問題のプリントをカバンの中に確認した。

彼が「わからん!」と投げ出した分数の通分の問題。

今回、これをもう一度出してみる。

もし彼が覚えていたら、「時間を置くことで理解が進むタイプ」という確信が持てるはずだ。

もしまた「わからん!」となったら、違うアプローチを考えよう。

どちらに転んでも、彼の成長を探るヒントになる。

そんなことを考えながら、私は颯太くんの家へ向かった。

2. 先月の「わからん!」が……?

「こんにちは。」

玄関を開けると、お母様がいつものように少し申し訳なさそうな顔で迎えてくれた。

「先生、今日もよろしくお願いします。でも、また機嫌が悪くならないといいんですが……。」

私は軽く笑って答えた。

「まあ、どうなるか見てみましょう。」

勉強部屋に入ると、颯太くんはすでに机に座っていた。

しかし、私と目が合うと、すぐにそっぽを向いた。

(今日はどんな調子かな……?)

私はカバンから前回の挑戦問題のプリントを取り出し、何気ない顔で机の上に置いた。

「じゃあ、今日はこれからやろうか。」

颯太くんは、ちらっとプリントを見た。

そして、特に何のリアクションもせず、鉛筆を持って問題を解き始めた。

(……あれ?)

私は息をのんだ。

(前回、あれだけ『わからん!』って投げ出した問題なのに……。)

颯太くんは、特に迷う様子もなく、スラスラと解き進めていった。

まるで、初めて見る問題ではなく、すでに何度も練習したかのように。

そして——

「できた。」

彼は何の感情もないように、淡々と言った。

私はプリントを見た。

(……合ってる。)

「うん、正解。」

「ふーん。」

彼は軽く頷き、何事もなかったかのように次の問題を待った。

3. 先生(あなた)の気づき

私は彼の様子を観察しながら、あることを確信した。

(わからない問題に出会って荒れても、時間を置けば解決できることがある。)

前回の彼の態度を思い出す。

・「わからん!」と怒る。

・鉛筆を投げる。

・説明しても「わからん!」を繰り返す。

でも、今回の彼は——

・普通に問題を解いた。

・「できた」と淡々と言った。

・わからなくて荒れたことすら、忘れているようだった。

(つまり、彼は「時間を置くことで理解が進むタイプ」なんだ。)

その場で徹底的に解説しても、彼の中で整理が追いつかない。

でも、時間を置けば、「なんとなく理解できたこと」が、自分の中でまとまり、「普通にできる」に変わる。

(よし、今後は「その日にじっくり解説すること」と「日を置いて確認すること」の両方を意識して指導しよう。)

私は心の中でそう決めた。

4. お母様の不安

指導が終わり、帰り際にお母様と話をした。

「先生、今日の様子はどうでしたか?」

私は少し笑って答えた。

「驚きましたよ。前回、『わからん!』と投げ出した問題を、今日は普通に解きました。」

「え?」

お母様は目を見開いた。

「でも……家では特に勉強していなかったはずです。」

「ええ。だからこそ、彼は『時間を置くと理解が進むタイプ』なのかもしれません。」

お母様は少し戸惑ったように眉をひそめた。

「それでも、本当に大丈夫なんでしょうか……?」

「もちろん、即座に理解する力も大切です。でも、時間をかけてでも『理解できるようになる』ことの方が、私はもっと大事だと思います。

お母様はじっと考え込んでいた。

「……確かに、あの子は一度は分からなくても、あとから『なんかできた』と言うことが多いかもしれません。」

私は頷いた。

「今後は、すぐに解決しようと焦らずに、『理解するまで時間を置く』ことも意識してみましょう。」

お母様は少し安心したように微笑んだ。

5. これからの指導方針

帰りの電車の中で、私は考えていた。

(その日にすべてを解決する必要はない。)

わからない問題に出会ったとき、彼はすぐに「わからん!」と感情的になる。

でも、それは「頭が悪いから」ではなく、単に「整理が追いついていないだけ」なのだ。

焦って解説しすぎると、彼の混乱はさらに深まり、イライラが増す。

だからこそ、その日にすべてを解決しようとせず、一度時間を置いてから再挑戦する方が、彼には合っているのかもしれない。

(次回の指導からは、わからない問題が出たら、「まずは一緒に考える」→「必要なら軽くヒントを出す」→「深い解説は次回に回す」という方針にしよう。)

そうすれば、彼自身が「わからん!」と荒れることも少なくなるはずだ。

「……なるほどな。」

私は小さく呟いた。

今回の指導で、「颯太くんの成長の仕方」 を知ることができた。

これが、彼の学習スタイルを理解する上で、大きなヒントになる。

(これからが、もっと楽しみになってきたな。)

電車の窓から流れる景色を見ながら、私はそう思った。

📌 次回予告:第4話「やればできるかも?」

第4話「やればできるかも?」~「わからん!」から「考える」へ~

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