第6話「中学受験と新しい世界」~「お父さんの学校に行きたい」~


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1. 受験を決めた理由

颯太くんが中学受験を決意したのは、小学6年生の夏だった。

それまでは、特に進学について深く考えている様子はなかった。

むしろ、勉強よりも絵を描くことや、学校の友達との遊びのほうが楽しいというタイプだった。

しかし、ある日——彼はふと口にした。

「俺、お父さんの学校に行くわ。」

その言葉に、お母様は驚いた。

「えっ……?」

彼の父親は、颯太くんが幼い頃に他界していた。

彼にとっては、ほとんど記憶にない存在のはずだった。

「お父さんの出身校……熊本の進学校のこと?」

「うん。」

彼は迷いのない目をしていた。

「なんで?」

「なんとなく。お父さんが通ってたなら、俺も行ってみたい。」

彼の言葉は、あまりにシンプルだった。

しかし、お母様にとって、それはとても特別な意味を持っていた。

「でも……」

お母様は戸惑った。

熊本の進学校は、県内でもトップクラスの難関校だった。

今の彼の成績を考えれば、正直、合格するのはかなり厳しい。

(今のままで、本当に合格できるの……?)

しかし、彼の目は変わらなかった。

「行くって決めたから。」

彼の決意は固かった。

2. 受験勉強の変化

それまで、勉強に対して「まあ、やるか」くらいの気持ちだった颯太くん。

しかし、「お父さんの学校に行く」と決めた日から、明らかに変わった。

✅ 国語の読解問題を最後まで読むようになった。

✅ 算数でわからない問題があっても、「もう少し考えてみる」と言うようになった。

✅ 今まで15分しか続かなかった集中が、30分、1時間と伸びていった。

私は正直、驚いていた。

(ここまで変わるものか……?)

もともと、彼の頭の回転は速かった。

しかし、今までは「面倒くさい」と感じるとすぐに放り投げる癖があった。

でも、この頃から、彼は自分で「もう少し考えてみよう」と粘る姿勢を見せるようになった。

(もしかしたら、本当に行けるかもしれない……。)

私は、彼の可能性に賭けてみようと思った。

3. 受験直前期

冬。

受験まで、あと1ヶ月。

「先生、模試の結果、合格ラインギリギリだった!」

彼は嬉しそうに報告してきた。

「おお、すごいじゃん!」

「でしょ?」

「でも、ここからが勝負だからな。」

「わかってるって。」

その頃には、すでに彼の表情には自信があった。

4. 受験当日

試験当日。

「緊張してる?」

私は彼にこのメッセージをお母様の携帯を経由して送った。

『別に。』

短い返信。

でも、お母様は明らかにソワソワしていた。

「この子、今朝ほとんどご飯食べなかったんです……!」

(やっぱり緊張してるんだな。)

試験会場に向かう彼の背中は、今までとは違う雰囲気を持っていた。

(大丈夫。彼はここまで来た。)

私はそう信じるしかなかった。

5. 合格発表の瞬間

数日後。

合格発表の日。

お母様からの電話が鳴った。

「先生!! 受かりました!!」

その声は、涙混じりだった。

「おめでとうございます!」

私はすぐに、颯太くんに連絡した。

『合格おめでとう! どうだった?』

彼の返信は——

『まあ、受かったわ。』

あまりにも素っ気ない。

(もっと喜んでもいいんじゃないか……?)

でも、お母様は違った。

「先生……ありがとうございます……!」

彼女の声は震えていた。

「本当に、この子がここまで頑張るなんて……。」

私は静かに頷いた。

(でも、本当の勝負はここからだ。)

6. 進学校での新たな日々

春。

颯太くんは、念願の進学校へ入学した。

しかし、ここからが本当の試練だった。

入学早々、彼は 先生たちから目をつけられる生徒 になってしまう。

理由は——

✅ 授業中の態度が目立つ(良くも悪くも印象に残る)

✅ 指示されたことをすぐにやらない(でも、やるときはやる)

✅ 成績が極端に波がある(テストによって結果が違いすぎる)

先生たちからの印象は、こうだった。

「面白い生徒ではある。でも、扱いが難しい……。」

そして、お母様も 学校に呼び出されることが増えていく。

ある日、学校の先生がこんな言葉を口にした。

「お母さん、このままだと学校を辞めたほうがいいかもしれません。」

その言葉を聞いたとき、お母様は青ざめた。

(せっかく合格したのに、もう退学の話が出るの……?)

しかし——颯太くん本人は、まったく気にしていなかった。

「まあ、大丈夫っしょ。」

彼は相変わらず、どこか楽観的だった。

📌 次回予告:第7話「学校の壁」

第7話「学校の壁」~進学校での挫折、そして先生たちからの厳しい言葉~

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